越境ECとは?メリットや導入事例、成功事例を紹介
近年は中国やアメリカなど、海外に物やサービスを販売する越境ECを運営する個人・企業が増えてきました。しかし、越境ECは外国の法律との兼ね合いや、言語・貿易の壁があり、慣れていないと大きなトラブルに見舞われることもあります。
そこで、ここでは越境ECについての概要をはじめ、中国やアメリカを中心とした市場規模や海外販売のメリット・デメリット、ECモールの出店やECサイト運営における注意点をまとめて解説します。
CONTENTS
- 1 越境ECの概要とメリットを解説
- 2 中国の市場規模と見過ごせない理由
- 3 中国市場向けECサイト・モールを展開する注意点
- 4 イベント情報を探すのがポイント。桁違いの売り上げが期待できる
- 5 越境ECにおける日系企業の成功事例
- 6 海外進出を検討している企業は越境ECビジネスが最適
- 7 越境ECに出店するパターン
- 8 越境ECサイトを始める注意点・デメリット
- 9 人気の越境ECを探している方必見。ランキングで紹介!
- 10 越境ECサイトは問い合わせ対応がとても重要
- 11 越境ECサイトの記事・SEO関連の課題と解決方法
- 12 越境ECを成功させるためにはコンサルタントにサポートしてもらうのもおすすめ
- 13 まとめ:越境ECで成功したいならWEB専門家に相談を
越境ECの概要とメリットを解説
2010年代に入ると、スマホの普及の加速につれて、インターネット通販の規模も増加していきました。経済産業省公開のデータによると、日本国内のEC市場規模は、2010年には7兆7000億円だったものが、2020年には12兆を超えています。これは物販のみとなるので、サービスやデジタル系商品をすべて含めると、19兆円規模となります。
しかし、海外のEC市場に目を向けると、アメリカは100兆を超え、中国は260兆円規模となり、桁がまるで違うことが分かります。
外国のECモールに出店したり、自社のネット通販サイトを外国仕様にして、外国人対応をすることを「越境EC」と呼びますが、越境ECビジネスを試みる最大のメリットは、この市場スケールに参入できることと言えるでしょう。
成功すれば事業は大きく拡大できる
上述したように、越境ECに参入し、ビジネスレベルで成功できれば、ゼロの桁が違う売上を達成することができます。もちろんハードルや障害は多く、参入障壁は決して低くありませんが、一般的な海外進出と比較すると、失敗したときの損失も最小限に抑えられるため、企業の掲げる一つの新規事業としてチャレンジしてみる価値は大いにあります。
海外進出を実現できる。長期にわたる利益を期待できる
越境ECのメリットは売上の拡大だけではありません。零細中小企業でも、最小限の事業資金で海外進出を果たすことができます。近年のグローバル化や日本の国力の低下によって、企業が向き合うマーケットは国内から海外へと移り変わりました。しかし、実際に海外進出するとなると、綿密なマーケティングや駐在事務所の設立、外国語堪能の人材の雇用など、大きな時間と費用が掛かります。
一方で越境ECは国によっては現地法人の設立などが条件としてあるものの、多くのケースで書類のみのやりとりで参入することができます。今後もBtoCにおけるEC市場規模は拡大の一途を辿ることが予想されるため、EC市場規模が大きい国に一度根付いてしまえば、長期的に安定した利益と事業の発展を期待できます。
中国の市場規模と見過ごせない理由
経済産業省統計によると、2021年における中国のEC市場規模はなんと260兆円越え。これは世界のEC市場規模の52.1%となり、2位のアメリカの19%を大きく突き放した格好となります。
2030年代にはGDPでもアメリカを抜くと言われており、日本とは元来政治的な国際摩擦が生じているものの、民間企業にとっては依然として見過せないマーケットとなります。
>>経済産業省「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」
中国市場向けECサイト・モールを展開する注意点
EC市場規模世界1位の中国に参入を計画する場合、ECサイトの運用、もしくは中国現地のECモールへの出店が越境ECビジネスの第一歩となります。しかし、ご存知の通り中国は社会主義国となるため、外国人・海外企業が越境ECビジネスを行う場合は、現地顧客の特殊な買い物環境に特化した仕様にしなければなりません。
1.中国人向けチャットによる問い合わせ対応
日本でも最近は増えてきましたが、WEBサイト上でチャットによる問い合わせ相談機能は、中国では必須のサービスとなります。AIチャットよりもリアルタイムで従業員とやり取りできるのが中国のスタンダードとなります。
2.EC決済システム
日本ではECモールやECサイトの決済時には、通常のクレジットカードやデビットカード、銀行振込といった支払い方法が通常となりますが、中国では詐欺事件も多発しているため、第三者となるプラットフォームアプリを通じて、商品を受領したのち代金を支払う方法が定着しています。
日本企業も中国市場に越境ECとして参入するのであれば、現地の事情に合わせる必要があると言えるでしょう。
3.価格設定
中国の越境ECモールを覗いてみると分かるのですが、どの商品も非常に安く大ロットで売られています。価格設定を間違うと大量の在庫を余らせてしまうことになりますが、価格相場のマーケティングは中国人の心理的な要素も大きいため、中々把握できないのが難しいところです。
イベント情報を探すのがポイント。桁違いの売り上げが期待できる
世界1位と2位のEC市場規模を持つ中国とアメリカには、1年で最も重要かつ最大のイベントがあります。中国は11月11日の独身の日、アメリカは感謝祭前後に開催されるブラックフライデーとサイバーマンデーとなります。
中国の独身の日におけるアリババ運営のECモール取引額は、日本最大手ECモール「楽天通販」の年間取引額の1.2倍を記録しました(2019年)。
アメリカのブラックフライデーにおいても、小売店の中には「1日で1年分の売上を稼ぐ」というお店もあるほどです。
このような各国最大級のイベントは必ず参加するのが越境ECで勝ち抜くためのポイントとなります。
日本品質の商品・サービスはまだまだ需要が高い
日本企業が越境ECビジネスで成功、および競合他社との差別化を図ることを考えた場合、アイデアの近道は「日本の品質」、「日本のサブカルチャー」などに焦点を当ててみることです。
いまでは韓国や台湾勢だけではなく、中国製品も品質向上してきましたが、それでも外国の一般消費者の間では日本の品質は折り紙つきという印象です。
中国を筆頭にアジア諸国も近年はインフレが続き、国民所得も上がってきました。値段よりも品質をとる人も増えてきたので、多少高くとも日本の製品やサービスはまだまだ高い需要があるとみていいでしょう。
越境ECにおける日系企業の成功事例
日本国内でも多数の日系企業が越境ECビジネスに参入しています。自社のオリジナル製品を売るよりは、日本の習慣や伝統にちなんだものが受け入れられやすいです。
日本人の習慣を売り物にした成功事例
京都に本社を構える「BENTO&CO」は、日用雑貨全般を販売する輸出販売&コンサルタント会社です。雑貨類の中でも日本のキャラクターのお弁当箱が海外の主婦に大絶賛され、現在では世界60か国に輸出販売されています。
WEBサイト上でも日本語・英語・フランス語対応されており、チャット機能もあります。各言語によってコンテンツやPR商品を変えたりと、しっかりとユーザー心理を把握している様子もうかがえます。
公式HP:https://en.bentoandco.com/
日本文化を商品にした成功事例
日本のサムライの象徴となる「甲冑」をオンライン販売する「サムライストア」は、世界52か国に納品実績を持ちます。おそらくほとんどの日本人は知らないサイトかもしれませんが、日本の歴史好きの外国人にとっては、喉から手が出るほど欲しいアイテムが並んでいます。
言語は英語・中国語・インドネシア語・タイ語に対応。海外販売支援サービスやeBayの出品代行なども業務範囲としています。
公式HP:https://samurai-store.jp/
日本品質の成功事例
東京都に所在をおく株式会社ほたかが運営する「カキモリ」は、高品質な文房具を販売するオンラインストアです。外国人にとって日常的に使う文房具は使い捨てであり、ブランドを使うのは一部のお金持ちだけでした。しかし、カキモリは高品質な文房具を提供、かつブランディングに注力し成功をおさめています。
海外からの購入方法(支払い手段・領収書・ギフトラッピング・物流・配送)も詳しく説明されており、英語にも対応しています。各国の配送料も細かく記載があるので、ユーザーは安心して購入手続きに踏み込むことができるでしょう。
海外進出を検討している企業は越境ECビジネスが最適
日本のマーケットに中々活路を見出せない、あるいはさらなる飛躍の一歩として海外進出を計画している企業は、まずは越境ECでビジネスを始めるのがおすすめです。ここ数年で世界情勢は大きく変わったのは記憶に新しいところです。2020年に新型コロナ、2022年にロシアウクライナ問題。そしてインフレに対応する米国の利上げにより、日本は歴史的な円安となりました。
このような不安定で先が見通せない経済状況では、企業の海外進出は高いリスクがつきものです。そのため、多額の予算・費用をかけて進出するのではなく、越境ECでWEBマーケティングをしながら感触を確かめてみるのが、企業にとってのリスクヘッジとなります。
越境ECを導入する際には、適切な戦略の理解が不可欠です。
導入をご検討の方は下記をご参考にしてみてください。
OPENLOGI オープンロジ |日々の物流業務をもっと簡単シンプルに
越境ECに出店するパターン
越境ECビジネスを開始するにあたっては、大きく分けて2つのパターンが考えられます。どちらも一長一短やメリット・デメリットがあるので、よく社内で吟味する必要があります。
1. 自社のECサイトを外国語対応にする
まず、越境ECビジネスに参入する方法の1つが「自社のECサイト(通販サイト)を外国語対応にする」ことです。最低でも英語に切り替えることができれば、英語圏やヨーロッパ諸国でビジネスを展開できます。
また、昨今はアジア圏でも英語の通販サイトに対するアレルギー反応は少なくなってきたので、シンガポールやフィリピンをはじめ、マレーシアやベトナムといった東南アジア圏にも参入の余地はありそうです。
ただし、自社のWEBサイトで海外展開を考える場合、SEO対策やWEB広告といったWEBマーケティングが必要となります。販売対象国で流行っているSNSや検索エンジンを調査して、効率的・効果的な販売PRを考えたいところです。
2. 外国の越境ECモールに出店・販売する
もう1つの方法は、越境ECモールに出店することです。サイト規模が大きくないとなかなか日本の商品を販売できるターゲット層に訴求することができないので、最初の出店先は非常に重要です。
ただし、いずれの方法も海外の法律と貿易が絡んできます。現地に法人を作って在庫を所有するのであればいいのですが、ほとんどの企業は日本から海外発送をするはずです。
海外に商品を送る場合は輸出手続きが必要となります。小物であればDHLやFedExでドアtoドアで発送できますが、数物や大きな商品は船便を使うことになるので、配送手続きには関税含む貿易の知識が必要です。
現地の商品代行業者を利用するのも有効
中国やアメリカといった越境ECの市場規模が大きい国・都市では、日系・地場の商品代行業者が数多くあります。出店や販売、チャット相談の代行業者もいれば、輸出入の手続きを代行してくれる業者もいます。料金体系は商品購入金額の5~15%が相場となりますが、決して安いわけではないので、継続的な活用は控えるのが得策です。
越境ECサイトを始める注意点・デメリット
上記では主に越境ECサイト・モールによる海外進出方法やメリットをご紹介しましたが、その一方で注意点やデメリットもあります。商品が届かないなどのトラブルも考えられるので、事前にリスクを想定して対応マニュアルを作成することも重要なステップです。
1. 言語の壁は大きい。特に中華圏は注意が必要
まず、越境ECビジネスを成り立たせるためには、言語の壁をクリアしなければなりません。ターゲットとする国や地域にもよりますが、基本は現地語が望ましいです。特に多くの日本企業が狙う中華圏は中国語に対応することが必須となります。越境ECモールの運営サイドや消費者とのやりとりも中国語ですし、モールに出店する際に必要な書類なども中国語に翻訳しなければなりません。
Googleアプリのような機械翻訳では限界があるので、必要に応じて翻訳の外注や代行業者の利用を検討するといいでしょう。ただし、本格的に中国でビジネスを考えるのであれば、最低一人は中国語の読み書きが堪能な従業員が必要となるでしょう。
2. 決済や関税、為替により運営方針が変わる場合も
新型コロナを契機に物流コストが高騰しており、商品をいかに安く販売しても、買い手からすると配送料と関税を含めると、高い金額を支払わなければならないこともざらにあります。
特に昨今はロシアウクライナ問題が激化した関係で石油価格が高騰。空輸便・船便といった輸送手段が通常よりもコストがかかります。また、昨今の急速な円安も多大な影響を受けています。一般的に円安は海外販売には有利となりますが、為替差益を相殺するほど物流コストが上がっているため、小規模事業者が越境ECにおいてそれほどの恩恵は期待できません。
関税の仕組みや手続きを理解していないと、最悪シップバックとなり多大な損失を被ることもあります。
3. 越境ECは出店条件が厳しい場合も。必要書類を集められない
自社のWEBサイトを越境ECサイトに仕上げるのはそれほどの労力はかかりませんが、多くの企業は一山当てるかの如く越境ECモールの出店を希望します。ただし、中国をはじめ多くの国では海外勢の出店を厳しく規制しています。
例えば中国の越境ECモールに出店したい場合は、現地に登記がなければなりません。越境ECは各国の法令が非常に深く関わっているので、進出・出店条件に必要な書類を集められないと、そもそもビジネスを始めることができないことも覚えておきましょう。
人気の越境ECを探している方必見。ランキングで紹介!
ここでは日本企業に人気の越境ECをご紹介します。日本企業に支持されているということは、出店しやすい表れでもありますし、いざというときに相談したり、代行してくれる業者も多いので、最初の足掛かりとしておすすめです。
1. 日本人にも馴染みのある「Amazon.com」
普段日本国内で日本人が利用しているのは「Amazon.co.jp」ですが、越境ECはアメリカ本国で展開している「Amazon.com」となります。アマゾンが日本人に親しみのあるECモールであることと、英語のため何となくでも出店までの流れや利用方法を把握しやすいこともあり、日本企業には最もおすすめできる越境ECとなります。
2. 小規模から着実に売上拡大を狙うなら「eBay」
どちらかというと個人もしくは個人事業主といった小規模事業者に人気のeBayは、米国の市場シェアランキング5位の越境ECです。アメリカ人の個人消費者が気軽に利用するECモールとなるので、返品率が高かったり、購入者とのやり取りでトラブルが発生するリスクも鑑みなければなりません。
ただし、最大手のAmazonと比べると競合は少ないですし、日本企業もそれほど多く進出しているわけではないので、しっかりとした対応とサポートをすれば、消費者から高い信頼を受けることもできます。
3. 中国最大規模の越境ECモール。アリババグループ「Tmall(天猫)」
中国市場をターゲットとするならば、国内最大手の越境EC「Tmall(天猫)」がおすすめです。対抗馬となる「JD Worldwide(京東)」と月々の取引額はそれほど変わるわけではありませんが、独身の日を含む中国国内のイベント時の売上は京東と比べても桁違いです。
ただし、中国の越境ECに参入するためには、現地登記が必要となるので、合弁会社を作ったり、現地の企業に販売の業務委託契約をしなければならなかったりと、本土にツテがない場合は敷居が高いことがネックとなります。
越境ECサイトは問い合わせ対応がとても重要
越境ECに出店したり海外向けの通販サイトを運営する場合は、問い合わせ対応が非常に重要な要素を占めます。リアルタイムの無料チャット相談だけではなく、問い合わせに対しては現地語で返信するのが常識となりますし、料金確認や決済方法で間違いがあると、途端に消費者からの信頼を失います。
越境ECサイトの記事・SEO関連の課題と解決方法
自社のサイトを越境ECとして運営する場合は、進出国の検索エンジンに対してSEO対策を行うのが成功の道となります。アメリカはGoogle、中国は百度に対してSEOの施策を検討しなければなりません。
しかし、現地の事情を理解できない企業が海外SEOを自社で行うと、課題も決して少なくありません。
越境ECサイトではSEO対策、越境ECモールではタグ対策をする
現地人が検索エンジンでキーワード検索をした際に自社のWEBサイトが上位に表示される施策をSEO対策と呼びますが、検索エンジンのアルゴリズムに対応した施策を実行するだけではなく、現地人が日ごろどのようなキーワードや文章で検索窓に打ち込むかも理解する必要があります。
一方で越境ECモールでSEO対策を行うとしたら、検索エンジンではなくECモール内となります。自社商品ページ内の商品名や商品紹介文章に気を遣うといいでしょう。しかし、ECモールの場合は、それ以上に「タグ対策」が効果的です。商品タグや関連タグをすべての商品に適切につけることで、ユーザーに自社商品を容易に見つけてもらうことができます。
越境ECを成功させるためにはコンサルタントにサポートしてもらうのもおすすめ
越境ECは単に海外マーケットの把握に努めるだけではなく、物流や関税、SEO対策といった諸条件もクリアしなければ成功することはできません。これまでインターネットによる海外販売の経験がない企業が参入を試みても、なかなかうまくいかないかもしれません。
もし企業が越境ECを1つの事業の柱として成功を望んでいるならば、初期費用はかかってもコンサルタントにサポートをしてもらうのがおすすめです。
「ホームページ制作大阪ドットコム」では多言語対応サイト・記事翻訳が可能
「ホームぺージ制作大阪ドットコム」は、大阪を中心に関西圏で活動するIT企業です。WEB制作・SEO対策・広告運用・SNS運用代行などWEBにまつわるコンサルタントをトータルで引き受けています。
また、海外ECサイトの制作実績が豊富なほか、12か国以上の言語をネイティブ翻訳することができます。完成度の高い越境ECサイトの制作を依頼できるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。進出までの成長の道筋を見つける手伝いをしてくれます。
まとめ:越境ECで成功したいならWEB専門家に相談を
今回は越境ECの概要や注意点、成功のポイントなどをご紹介しました。越境ECは成功するまでの道のりは簡単ではありませんが、その分、軌道に乗ったときの見返りは非常に大きく魅力があります。
まずは越境ECの運営体制を構築しなけれなりませんが、もし何をすればいいのか不明点が多い、というのであれば、最初の段階でWEBの専門家に相談してみるのもいいでしょう。